こんにちはkohapaです。
私は100万人に1人と言われる特発性肺へモジデローシスという病気です。
現代医学では治療法が無く、現在は肺移植待機という状態です。プロフィール
ドナー患者登録完了から3ヶ月後のある日「完全房室ブロック」という症状に襲われ、急遽ペースメーカーの植え込み手術を受ける事になりました。
今後、ペースメーカー植え込み手術を受ける予定がある方の参考になると良いなと思い、私の体験をお伝えします。
ペースメーカーってどこに植え込むの?
ペースメーカーをどこに植え込むのか、気になると思います。
ペースメーカー本体は一般的には前胸部(鎖骨の下)に植え込みます。
ペースメーカーを入れた側の腕を激しく動かしてはいけないなど、制限が多少はあります。
その為、子供は運動量が多いので腹部に植え込む事もあるようです。
右か左のどちらに入れるかは、自分の利き腕と反対側を進められますが、自分で決める事が出来ました。
ちなみに私は、左胸に植え込みました。
私は、痩せているので服を脱ぐと、ポコッと膨らんでいるのでペースメーカーが入っているのが見てわかります。
肉付きの良い人や女性は植え込んでもあまり目立たないそうです。
大学病院でのペースメーカー植え込み手術
私は名古屋大学病院でペースメーカーの植え込み手術を受けました。
名古屋大学病院では、毎日5件程のペースメーカー植え込み手術が実施されているようです。
日本国内では、毎年およそ4万人もの方がペースメーカーの植え込み手術を受けられており、装着者は40万人に上るそうです。
手術前日に翌日の手術順が2番目だと伝えられました。
一般的にペースメーカー手術にかかる時間は「1時間~2時間」だそうです。
一番最初の手術が9時に始まり、前の方の手術時間によって、2番目以降の手術時間は前後します。
手術開始、ペースメーカーを入れるポケット作り
私に声が掛かったのはお昼前でした。術衣に着替えるなどの準備をして12時半ごろ車椅子に乗って手術室へ向かいました。
手術室に到着すると、医師とスタッフによる内容の確認などが約10分間行われました。
それが、終わると自らの足で手術台に乗ります。さすがにこれくらいから緊張してきます。
術衣を剥がされ、メスを入れる部分にシートをかけ、見えないように顔にもシートを掛けました。
血圧計を装着、点滴を入れて手術中は落ち着かせる為、眠り薬を入れながら行います。
まずは、ペースメーカーを植え込む為のポケットを胸に作ります。
麻酔注射、そして左胸にメスが入った。
もちろん麻酔は効いているが、意外と切っている感覚はわかりました。
メスが皮膚の中へ進んでいくと麻酔のあまり効いていない部分に達するので結構痛い、痛みを訴えるとその度に麻酔を打つ。
合計で20発以上麻酔を打ったと記憶しています。
メスに意識が行くと、怖いので、なるべく他事を考え、頭の中で歌を歌ったりしながら気を紛らわしていました。
痛みはそこまで無いが、何をしているのかが感覚で伝わってくるのがちょっと気持ち悪かった。
先生の手の感覚から胸にポケットが出来た感じもわかるくらいでした。
ポケットが完成すると、ペースメーカー本体を胸に装着。
ペースメーカー本体を入れてからが長かった。
ペースメーカーから心臓につながるリード線を固定する為、少し心臓に差し込むそうなのですが、その位置がなかなか決まらず、一般的な手術時間を結構上回りました。
リード線を心臓に当てて信号を送り、帰ってくるリアクションの良し悪しで場所を決めている感じでした。
何度も何度も場所を変えて試すもなかなか良い場所が決まりません。
やり取りを聞いている内に徐々に意味がわかって来て、測定する度に「頼む!決まれ!」と願っていました。
何度も何度も試してようやくリード線の位置が決まりました。
リード線と本体を繋ぎ、切開した部分を縫い付け、手術は終わりました。
「長かった、ホントに長かったー!」と感じました。終わった後は全身汗だくになっていました。
私の場合は、心臓の血管の状態を調べるカテーテル検査も同時に行ったので、通常のペースメーカー埋め込みの手術より30分ほど余計に時間がかかりましたが、トータルで掛かった時間は3時間半以上でした。
3時間半横になったまま、意識がある中で手術をするというのもなかなか大変でした。
同時進行でカテーテル検査を足の付け根から行ったので、止血の為に6時間は起き上がるのが禁止でした。
手術直後で左手を思うように動かせない中、寝ながらでも食べられるおにぎりなどが用意されましたが、疲労と不十分な態勢のせいで食べるのが大変。
なんとか空腹を満たす程度しか食事はとれませんでした。
まったく体勢を変える事ができない6時間は腰が痛いしとても辛かった。
ペースメーカー植込み手術の入院期間は約一週間が一般的
ペースメーカー植え込み手術の退院目安は、一週間くらいが一般的だと言われています。
毎日傷口のチェック、ペースメーカーが正しく動いているかを器械を使って調べたりします。
傷口の抜糸が必要な場合もありますが、私は溶ける「吸収糸」を使用した為、抜糸の必要は無く、約2ヶ月で完全に溶けて吸収されるらしいです。
抜糸は結構痛いので、それが無いのは嬉しいです。
私の場合は、完全房室ブロックを発症して手術を受けるまでに一週間かかったので、一週間ぶりにベッドから降りる事が出来ました。
さすがに、筋力もかなり低下していて最初は歩くにも少しふらふらでした。
手術翌日にはオシッコの管が抜けて、ようやく自ら歩いてトイレに行けるようになり、久しぶりにシャワーを浴びることも出来ました。
シャワーはめちゃくちゃ気持ちがよかった!
ペースメーカーの管理。今の技術は凄い!
術後3日目くらいにペースメーカーを管理する為の機械を渡されました。
固定電話程の大きさの機械にスキャナーが付いており、月末に一回、ペースメーカー部分に当てると1ヶ月分のデータがメーカーに送信されるという器械です。
Docomoの電波を利用して送信するシステムになっているらしいです。
モニター横の丸いボタンを押すと、スキャナーを持ち上げてくださいという画面に変わるので、スキャナーをペースメーカー部分に当てます。
すると右側の画面に変わり、スキャナーが1ヶ月間のデータを読み込み始めます。
読み込みが終了すると、スキャナーを戻す指示が出てメーカーにデータを送信します。
メーカーへのデータ送信が終わると、画面にチェックマークが打たれてデータ送信終了です。
たった3分くらいの簡単な作業です。
ペースメーカーを植え込むのは年配の方がほとんどなので、操作を簡単にする必要があるみたいですね。
病院側が送ったデータを閲覧して、問題が無いかをチェックするという仕組みになっています。
そんな仕組みになっているとは全く知らず、医療機器の進化に関心しました。
退院後は、1ヶ月後に外来通院で傷口やペースメーカーのチェックを行いました。その後は基本的に半年に一度の外来通院でOKです。
医療が進化し、便利な器械があるおかげですね。
ペースメーカー手帳を携帯する
ペースメーカー植え込み手術後、ペースメーカー手帳が渡されます。
手帳には、「個人情報」のほか、「心臓の病気」「手術を受けた病院」や、「担当医師の氏名」「埋め込まれたペースメーカーに関する詳細情報」が記入されています。
また、通院時にペースメーカーのチェックをし、その結果を記載するようになっています。
病院によってはCT撮影の際に、提示する必要があるので常に携帯しておかなければいけません。
万が一、倒れて意識が無い場合などに医師が手帳を見て、ペースメーカーの情報を知る為に常に携帯する事が大事です。
機器のメーカーによって違いがあるかもしれませんが、日本で最も採用されているドイツのメドトロニック製の手帳は、手のひらに丁度収まるくらいの大きさです。
大きくはありませんが、厚みが1㎝ほどあります。
一般的な財布には入らないので、別でポーチなどに入れて持ち歩く必要があります。
17日間の入院生活が終了。待ちに待った家族と再会。
完全房室ブロックによる緊急入院から、転院を経て退院まで17日間を要しました。
心電図を見た担当医は死んでいてもおかしくなかった、後1時間病院に着くのが遅かったらダメだったかもと言われました。
33歳という若さでペースメーカー植え込み手術を経験しました。
とにかく命を繋げた事が何よりもありがたい!と思えた体験でした。
命を落としていてもおかしくなかった状況の中、生き延びたという事は、私にはまだまだやるべきことが残されているという事なんだと思えました。
自宅に戻り、玄関を開けると妻と娘が迎えてくれました。
久しぶりだからか、まだ10ヶ月の娘はポカーンとしていた。私もなんだか現実ではないような不思議な感覚でした。
兎にも角にも、17日前に自宅の玄関前で、見送られたのが最後にならなくて本当に良かったと心の底から思えた娘との再会でした。