傷病手当金は、社会保険に加入している被保険者が業務外の病気やケガで働けなくなった時に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。
事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
私自身、現在病気療養中で傷病手当金を受給し生活しています。
ちょっとややこしい?傷病手当金の受給条件。
- 原則として社会保険加入者であること。(国民健康保険加入者は傷病手当金制度はありません)
- 業務外の事由による病気やケガなどで労務不能の状態である。
- 医師による労務不能を証明する診断書が必要。
- 事業主による休職している旨の証明が必要。
ここがポイント!待期期間。
連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと。
働けなくなった日から起算して3日連続で働けない期間を待期期間と言います。言葉だけではかなりわかりずらいので図をご覧ください。
引用元:全国健康保険協会
待期期間の3日間に公休が含まれていても、待期期間として認められます。
公休も含まれるという部分が誤解されがちなので、注意が必要なポイントです。
待期期間は傷病手当金の受給対象外になるので、有給休暇を充当しても大丈夫です。
傷病手当金の給付額はどれくらいもらえるの?
ここが一番気になる所かもしれません。手当を受給しながら生活していけるかどうかが掛かっていますからね。
引用元:全国健康保険協会
計算式にご自分の収入額を当てはめて算出してみてください。
支給開始前の12ヶ月間の毎月の総支給額平均の2/3が支給日額です。
休職中の社会保険料について
たとえ欠勤により会社からの給料が発生しなかったとしても、社会保険料は支払わなければなりません。
会社は給料から保険料を天引きできないので、従業員が直接会社へ社会保険料を支払う必要があります。
それなら傷病手当金から社会保険料を引いて欲しいなと思う所なのですが、傷病手当金から社会保険料を差し引くことはできないようです。
月給のおよそ3分の2の傷病手当金の中から社会保険料も支払わなければならないという事を頭に入れておく必要があります。
傷病手当金の支給期間は?延長は出来る?
傷病手当金が支給される期間は、支給を開始した日から最長1年6ヶ月です。
1年6ヶ月の期間中に病状が改善し仕事に復帰し、会社から給料をもらっている期間は傷病手当金は支給されません。
その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、職場復帰していた期間も1年6ヵ月に含まれます。
支給開始後、1年6ヵ月を超えた場合は、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。
加盟している協会によっては期間延長の制度がある場合もあるようです。
1つの傷病につき1年6ヶ月となる為、医師の診断により新たな傷病によって労務不能と認められる場合には、新たに傷病手当金の申請をすることは可能です。
ただし、健康保険協会から認められず不支給となる場合もあるようです。
傷病手当金を申請してから銀行口座に振り込まれるまでどれくらいかかる?
私は、別の傷病名で合計3回の傷病手当金を受給しました。
傷病手当金の申請は、まず担当医に就労不能である事実の証明をもらう為、会社から支給された申請用紙を通院時に病院の文書受付窓口で提出します。
医師が診断書を書いて、手元に戻ってくるまでに平均で1ヶ月程度かかります(忙しい先生は2ヶ月かかる事もありますし、病院によっても違いがあると思います)。
手元に戻ってきた診断書を会社経由で、健康保険協会に郵送してもらいます。
一番最初の申請の場合は、申請書が健康保険協会に到着後、傷病手当金の受給資格があるかどうかの審査が始まります。
初めての傷病手当を受け取るまでの期間は?
一回目の傷病手当金は申請から2ヶ月後に口座に振り込まれました。
振り込まれる際には、健康保険協会から通知書が自宅に届きます。
最初の支給までには審査がある為、少し時間がかかるようです。その間、収入が途絶える事になるので要注意です。
支給が認められれば、その後は申請書を送って約1ヶ月後に支給されていました。
2回目の受給までの期間は?
2回目の支給開始には約5ヶ月かかりました。
詳細はよくわかりませんが、細かな計算に時間がかかっているとの事でした。
さすがに生活に支障があったので会社も健康保険協会に取り合ってくれ、概算の金額を先に振り込んでもらう事が出来ました。
3回目は難航、医師に直接問い合わせがあった
3回目は審査が難航したようでした。
担当医に診断書を書いてもらいましたが、前回受給の傷病と新しく申請した傷病に関連性があるのではないかという疑いから担当医に直接3回の問い合わせがあったようです。
結果、受給は認められましたが、支給開始まで3ヶ月程度かかりました。
以上のように、申請書の提出から実際に傷病手当金を受給できるまでには時間差が生まれました(加入している保険協会にもよると思いますが)。
なかなか申請書の提出から実際に口座に振り込まれるまでに時間がかかる為、本当に傷病手当金を受給できるのだろうかという不安な気持ちになる事が多々ありました。
また、月末の何日といった決まった日に振り込まれる訳では無かった点も少し不安になりました。
傷病手当金制度を知ったきっかけ。
私は肺に100万人に1人という病気を持っています。
2015年に肺炎にかかり治療の為、約1ヶ月間の入院生活を送る事になりました。
勤務先の1ヶ月の勤務日数は平均22日間。
その時の有給休暇の残りが25日くらいあったので、有給休暇を使えば1ヶ月分の給料はもらえるから大丈夫と考えていました。
しかし、退院後に通院も必要になるのに有給休暇が残り3日では、有給消化後には欠勤して通院しなければいけない事に気づき、何か良い制度が無い物かと調べた所、傷病手当金制度を知ることになりました。
勤務先は休職期間に有給休暇を使うのだろうと思っていたようで、傷病手当金についての話はありませんでした。
自ら調べて気づいていなければ、その時には知ることが出来ないまま終わっていたかもしれません。
友人と自身の病気の話になっても傷病手当金の制度については知らない友人がほとんどです。
一般的にも意外と知らない人が多いのではないかと思いました。
健康であれば知らなくても困りませんが、持病を抱えていて働く事が辛くても家族を養うためには休む訳にはいかない!と無理をしてしまっている人もいるのでは無いでしょうか?
私は入院をきっかけにこの制度を知ったおかげで、長期の療養に入るという決断が出来ましたし、傷病手当金に救われました。
傷病名が変わって3回の傷病手当金の支給を受けられた!
私はかなり複雑な病気を抱えていました。
一番最初の傷病手当金を受けた傷病名はマイコプラズマ肺炎でした。約1ヶ月の入院を経て職場復帰しました。
しかし、その9ヶ月後、持病の悪化で休養する事を選択しました。
その時点で、マイコプラズマ肺炎での傷病手当金が認められる期間は6ヶ月残っていました。
休養に入る原因となる傷病がマイコプラズマ肺炎では無く、持病である特発性肺へモジデローシスであった為、休養に入ると同時に新たな傷病名(特発性肺へモジデローシス)で傷病手当金を受給する事になりました(受給期間は1年6ヶ月)。
その後も病状は芳しく無く、社会復帰できぬまま入退院を繰り返しました。
医師からは肺移植手術が必要な状態まで症状は悪化している事を告げられ、2017年4月に肺移植手術に必要なドナー患者登録をしました。
その後、在宅酸素療法の導入が必要となり、移植手術を受けられるまで社会復帰するのは厳しい状況でした。
特発性肺へモジデローシスでの受給が、2018年1月で1年6ヶ月の受給期間を迎え終了する事になりました。
現状働く事の出来ない私にとって支給が終了してしまう事は死活問題です。
しかし、幸か不幸かドナー患者登録をした時の検査入院で新たな傷病が見つかっていました。
肺動脈性肺高血圧症という病気です。呼吸器障害の末期的症状だと言われました。
傷病手当金の支給が認められるか否かは協会の判断によるので、肺動脈性肺高血圧症での需給が認められるかはわかりませんでしたが、担当医に相談して診断書を書いてもらう事にしました。
傷病手当金は基本的には一度受給した傷病、またはそれに関連する傷病での受給は出来ないとなっています。
私の場合は別の傷病として認められる、かという所が協会での審査にかなり時間がかかったようです。
担当医へ協会から直接問い合わせが3回もあるなどかなり難航しましたが、最終的には支給が認められました。
担当医に上手に診断書を書いてもらうよう直接話をする事が大切ですし、担当医としっかりと信頼関係を築いておくことも大切だと感じました。
2018年5月、肺移植手術を受ける事が出来ました。
術後の経過は良好で、8月には自宅に戻ってくることが出来ましたが、さすがに社会復帰はまだ担当医からOKはでません。
それでも2018年10月に3回目の傷病手当金の受給期間は終了になりました。
最初の傷病手当金受給開始から現在まで2年半、傷病名を変えて傷病手当金を受給出来た事は妻子を持つ私にとってはとても助かりました。
まとめ
健康に働けている時は、このような制度がある事などまったく知りませんでした。
私は入院をきっかけに傷病手当金制度の事を知り、1ヶ月の休職の後に職場復帰しましたが、半年後に病状が悪化し療養に入りました。
療養に入る前は本当に苦痛に感じる程、毎日生活も仕事も辛い時期でした。
なんとか家計の為に頑張らなければいけないという思いで無理をして働いていましたが、一度休まなければ本当に将来が無くなってしまうかもしれないと思い、会社に相談し、療養に入る事が出来ました。
この時、療養させてもらおうと思えたのは傷病手当金の制度を知っていたからというのも大きかったです。
知っていたからこそ、素直に制度に助けてもらおうと思えたのです。
家族を養う為には働く事は大事な事ですし当たり前の事です。
しかし、無理をして体や精神を酷使してしまっては家族との明るい未来までも失ってしまうかもしれません。
傷病手当金を受給しての生活は所得も減りますし、当然楽ではありません。
しかし、大切な家族を守る為には自分の体も守らなければいけません。
もしこの制度を受けず働き続けていたら大袈裟では無く今の私は無かったかもしれない。
傷病手当金という制度が存在する事に本当に感謝しています。